公開日 2026.07.04更新日 2026.07.04読了 約14分
第8回 EC広告クリエイティブの最新トレンド

「刈り取り」だけでは頭打ち。認知から購入までをつなぐ動画広告のファネル設計

「刈り取り」だけでは頭打ち。認知から購入までをつなぐ動画広告のファネル設計
この記事の要点

すぐに売上につながる「刈り取り」広告だけに頼ると、いずれ獲得は頭打ちになります。認知、興味・比較検討、刈り取り、そしてファン化という各段階で、出すべきクリエイティブも見るべき指標も変わります。動画をファネル全体で使い分けることが、成果を伸ばし続ける鍵です。

  • 刈り取り広告だけでは、届く相手が尽きて獲得が頭打ちになる
  • 認知は共感と世界観、比較検討はレビューと実演、刈り取りはオファーと強いCTA
  • 認知広告に即時のCPAを求めるのは設計上の誤り。段階ごとにKPIを分ける
  • リターゲティングとファン化まで設計すると、ファネルが循環しはじめる
  • 動画はファネルの上から下まで一貫して使える強力なクリエイティブ

こんにちは。UGC Makerを運営する株式会社リスポの黍田です。

今回は、動画広告を認知から購入まで一貫してつなぐ「ファネル設計」についてお話しさせていただきます。広告を出しているのに獲得が伸び悩む、いくら予算を足しても件数が増えない。そんなときは、クリエイティブの質だけでなく、ファネル全体の設計に原因があることが少なくありません。

多くの事業者が最初に手をつけるのは、すぐに成果が見える「刈り取り」の広告です。買う気のある人に最後のひと押しをする施策なので、成果が出やすく、始めやすい。ところが、これだけに頼っていると、あるところで必ず伸びが止まります。今回は、その理由と抜け道をお伝えします。

本記事では、なぜ刈り取りだけでは頭打ちになるのかを整理したうえで、購買ファネルの各段階でどんな動画を出すのか、リターゲティングや購入導線、そして購入後のファン化までをどう設計するのかを、定性・定量の両面でご紹介します。

「刈り取り」だけに頼ると、なぜ頭打ちになるのか

刈り取り広告は、すでに商品を知っていて、買うかどうか迷っている人に効きます。リターゲティングや指名検索への広告がその代表です。だからこそ成果が出やすいのですが、裏を返せば、対象になるのは「すでに自社を知っている人」に限られます。

この母集団は有限です。既存の見込み客に広告を当て続ければ、いずれ刈り取るべき相手が尽きてきます。そうなると、同じ予算を投じても件数は増えず、むしろ何度も同じ人に当たることで単価だけが上がっていきます。獲得が頭打ちになる典型的なパターンです。第5回でお伝えしたクリエイティブの疲弊とも重なり、同じ人に同じ広告を何度も見せることで、反応はさらに鈍っていきます。

この壁を越えるには、そもそもの母集団、つまり「自社を知っている人」の数そのものを増やす必要があります。それを担うのが、ファネルの上のほうにある認知や興味喚起の施策です。かつては「テレビで認知、デジタルで刈り取り」と役割が分かれていましたが、スマートフォンで動画を当たり前に見る時代になり、動画広告はこの需要を新しく生み出す役割まで果たせるようになりました。刈り取りだけの単発施策から、認知から獲得までを一続きで設計する「フルファネル」へ。ここに発想を広げることが、伸び悩みを抜ける第一歩です。

刈り取りのみでは早い段階で伸びが鈍る一方、認知から積み上げるフルファネルでは、母集団の拡大とともに獲得も伸び続けます。短期の効率だけを見て上流を止めてしまうと、中長期ではかえって損をすることがあるのです。目先のCPAを守るために認知を削った結果、数か月後に刈り取りの伸びまで止まる、というのはよくある話です。

動画広告で描く、購買ファネルの4段階

フルファネルを設計するために、まずは顧客がたどる道のりを4つの段階で捉えます。認知、興味・比較検討、刈り取り(獲得)、そして継続・ファン化です。それぞれで顧客の心理も、こちらの役割も異なります。

認知。まだ自社を知らない人に、存在を知ってもらい、興味の種をまく段階です。ここでの動画の役割は、広く届き、共感や関心を生むこと。すぐに買ってもらうことは目的ではありません。ここを飛ばすと、そもそも刈り取る相手が増えません。

興味・比較検討。存在を知った人が、「自分に合うか」「他とどう違うか」を吟味する段階です。ここでは、選ぶ理由を与え、不安を解消することが役割になります。レビューや比較、実演といった、納得を後押しする動画が効きます。

刈り取り(獲得)。買うかどうか迷っている人に、いま行動する理由を示して背中を押す段階です。限定オファーや特典、明確なCTAで、最後のひと押しをします。リターゲティングや指名検索への広告が主役になります。

継続・ファン化。一度買ってくれた人に、もう一度買ってもらい、さらに周囲へ広めてもらう段階です。ここを設計できると、口コミという新しい認知が生まれ、ファネルがぐるりと循環しはじめます。

大切なのは、この4段階に対して、同じ動画を当てないことです。まだ自社を知らない人に限定オファーを見せても響きませんし、いままさに買おうとしている人に世界観の動画を見せても回りくどいだけです。段階ごとに、相手の心理に合った動画を用意する。これがファネル設計の核心です。

段階ごとにクリエイティブを作り分ける

では、各段階でどんな動画を出せばよいのでしょうか。前段階の役割を、具体的なクリエイティブの方針に落とし込んでみます。

認知の段階では、広く共感を生む動画を。商品の細かいスペックより、世界観やストーリー、ハッとさせる切り口で、まず足を止めてもらうことを優先します。第4回でお伝えしたフックが、とりわけ重要になる段階です。ここで「なんだか気になる」という感情を残せれば、後の段階が効いてきます。TikTokなど拡散に強い媒体との相性がよい段階でもあります。

比較検討の段階では、納得を後押しする動画を。利用者のレビューや口コミ、他社との比較、実際に使っているシーンの実演などで、「これなら大丈夫そうだ」という安心を届けます。第2回でお伝えしたUGCが最も力を発揮するのが、この段階です。使う前と後の変化を見せるビフォーアフターや、購入者の生の声が、迷いを解消します。

刈り取りの段階では、行動を促す動画を。期間限定の特典や価格の訴求、返品保証といった安心材料を前面に出し、強く明確なCTAで締めます。ここでは、迷いを断ち切って「いま買う理由」をつくることに集中します。「本日23時まで」といった期限や、「30日間返金保証」といった安心が、背中を押します。

同じ商品でも、認知向けと刈り取り向けでは、まったく違う動画になるということです。ひとつの勝ちパターンを全段階に流用するのではなく、段階ごとに設計し直す。手間はかかりますが、ここを分けるだけで、ファネル全体の通りが大きく良くなります。

リターゲティングを正しく組む

ファネルの中盤から下を支えるのが、リターゲティングです。一度サイトを訪れた、動画を一定時間見た、カートに商品を入れたまま離脱した。こうした「あと一歩」の人たちに、もう一度アプローチする施策です。関心がすでに高いぶん、新規向けよりも反応が得やすいのが特徴です。

効果を出すには、対象をひとくくりにせず、行動に応じて分けることが大切です。商品ページを見ただけの人には比較や安心材料を、カートに入れて離脱した人には限定特典や送料無料といった最後のひと押しを、というように、離脱した場所に応じてメッセージを変えます。同じ人に何度も同じ広告を当て続けると逆効果になるため、接触の上限を設けたり、すでに購入した人を対象から除外したりする設定も欠かせません。

動画とリターゲティングの相性は良好です。認知段階で動画を一定時間見た人を、そのまま比較検討や刈り取りの対象として囲い込めるため、動画の視聴データそのものが、次の一手の起点になります。上流で動画を見せ、その反応をもとに下流で刈り取る。この連携を組めると、ファネルの流れが一気に滑らかになります。

広告の先を設計する:LPと購入導線の一貫性

見落とされがちですが、広告で心を動かしても、その先が噛み合っていなければ購入には至りません。動画を見てサイトに来た人が、広告とはまったく違うトーンのページに着地したり、知りたい情報がすぐ見つからなかったりすれば、そこで離脱してしまいます。広告とランディングページ(LP)は、ひと続きの体験として設計する必要があります。

具体的には、動画で使った訴求やキャッチコピーを、LPの冒頭でも受け止めること。動画で「30秒でメイクが決まる」と言ったなら、LPの最初にも同じ約束が見えている状態にします。期待と着地がそろっていると、人は安心して読み進められます。逆にここがずれていると、せっかく惹きつけた関心が、着地の瞬間に冷めてしまいます。

第2回でお伝えしたUGCは、LP上でも力を発揮します。広告で興味を持った人が、LPで実際の利用者の声や使用シーンの動画を目にすれば、「自分も大丈夫そうだ」という納得が生まれ、購入への迷いが薄れます。広告からLP、そして購入という一連の導線のどこにも段差を作らないこと。これが、刈り取りの成果を最後まで取りこぼさないための設計です。

購入で終わらせない:継続とファン化

ファネルは、購入して終わりではありません。とくにECやD2Cでは、一度きりの購入だけで採算を合わせるのは難しく、二度目、三度目と買ってもらうことで、はじめて事業として成り立ちます。新規獲得のコストが上がり続けるいま、既存顧客に長く付き合ってもらうことの価値は、これまで以上に大きくなっています。

初回購入者に、使い方の動画や活用のヒント、次に合う商品の提案を届ける。こうした購入後のコミュニケーションが、二度目の購入、いわゆるF2転換を後押しします。ここでも動画は有効で、文章では伝わりにくい使い方や魅力を、短い動画でわかりやすく伝えられます。顧客一人あたりの生涯価値であるLTVが高まれば、その分だけ新規獲得にかけられる予算も増え、ファネルの上流にも投資しやすくなります。

そして、満足した顧客は、自らレビューや投稿という形で新しいUGCを生み出してくれます。その声が、また別の誰かの認知や比較検討を後押しする。こうして、購入者がファンになり、ファンが次の顧客を連れてくる循環が生まれます。刈り取りだけを見ていると気づきにくいこの循環こそ、フルファネル設計がもたらす最大の果実です。

段階ごとに評価の基準を変える

ファネル設計でもうひとつ重要なのが、段階ごとに見るべき指標を変えることです。ここを取り違えると、うまくいっている施策を「成果が出ていない」と誤って止めてしまいます。

よくある失敗が、認知フェーズの動画広告を、刈り取り広告と同じCPA(獲得単価)で評価してしまうことです。認知施策は、まだ購買意欲の低い潜在層に届ける「需要を生む」ための施策なので、その場で獲得単価を求めるのは設計上の誤りです。認知広告のCPAが高く見えるのは当然で、そこで届いた人が後日、指名検索を経て購入に転換する価値は、目先の数字には表れにくいのです。

段階に応じて、たとえば認知ではリーチや完全視聴率、指名検索数を、比較検討ではサイトへの来訪やエンゲージメントを、刈り取りではCVRやCPA、ROASを見る、というように評価軸を分けます。この考え方は、次回の第9回で扱うKPI設計と効果測定にそのままつながります。段階ごとに正しい物差しを当てることで、はじめてフルファネルは正しく回りはじめます。

最後に

今回は、刈り取りだけでは頭打ちになる理由と、認知から購入、そしてファン化までをつなぐファネル設計についてお伝えしました。刈り取りという単発の施策から、認知、比較検討、刈り取り、ファン化を一続きで設計するフルファネルへ。段階ごとにクリエイティブも評価軸も作り分け、リターゲティングと購入導線、購入後の関係づくりまで含めて設計する。この視点を持つだけで、伸び悩んでいた獲得に、もう一段の伸びしろが見えてきます。

もっとも、段階ごとに違う動画を用意し、しかも各段階で複数パターンを試すとなると、必要なクリエイティブの数は一気に増えます。ファネル設計の理屈は分かっても、制作が追いつかず、結局は刈り取りの動画しか作れない。ここが多くの事業者様の現実だと思います。

弊社では、レビューやInstagram、TikTokなどのUGCを活用し、認知から刈り取り、ファン化まで、各段階に合わせた動画クリエイティブを、素材の確保から制作・運用まで支援するUGC Makerを提供しています。ファネル全体を動画で埋めたいという方のお役に立てるかもしれません。

よくある質問

「刈り取り」広告だけではなぜダメなのですか?

刈り取りの対象は「すでに自社を知っている人」に限られ、その母集団は有限だからです。当て続ければいずれ相手が尽き、獲得が頭打ちになります。認知施策で母集団そのものを増やすことで、刈り取りの効果も持続します。

認知の動画広告は、どう評価すればいいですか?

刈り取り広告と同じCPAで評価してはいけません。認知は需要を生む施策なので、リーチ・完全視聴率・指名検索数といった指標で評価します。目先のCPAが高く見えても、後日の指名検索や購入に貢献しているためです。

リターゲティングで気をつけることは?

対象を行動に応じて分けることです。商品ページを見ただけの人と、カートで離脱した人では、見せるべき動画が違います。あわせて、接触回数の上限設定や、購入済みの人の除外も忘れずに行います。

広告の数値は良いのに購入が伸びません。

広告とLP・購入導線がつながっていない可能性があります。動画で使った訴求をLPの冒頭でも受け止め、UGCを載せて不安を解消するなど、着地までを一続きの体験として設計し直すと改善しやすくなります。

段階ごとの動画を効率よく用意するには?

核となる素材から、段階ごとに構成やメッセージを変えて再構成するのが現実的です。UGC Makerなら、認知向けから刈り取り向けまで、複数パターンを一括で生成でき、ファネル全体のクリエイティブを効率的にそろえられます。

ファネル全体のクリエイティブなら、UGC Makerにおまかせください

認知から刈り取り、ファン化まで、段階ごとに動画を作り分け、さらにテストする。必要なクリエイティブの数を考えると、人手だけでは追いつきません。それを支えるのが、株式会社リスポが運営するAIクリエイティブプラットフォーム UGC Maker です。

商品情報を入力すれば、AIが訴求軸の異なるスクリプトを複数生成。キャスト × スクリプト × フックの組み合わせで、認知向けの共感型から刈り取り向けのオファー型まで、段階ごとの動画を一括で量産できます。撮影・キャスティング・編集は不要で、1本あたり約2,000円から。ファネルのどこにも穴を作らず、動画で埋めていけます。

刈り取りの先の伸びしろを取りにいきたいという方は、導入相談・資料ダウンロードからお気軽にどうぞ。貴社専用のデモ動画も無料で作成しています。

参考・出典
  • FICC 刈り取り広告と併用して利益を最大化するデジタル広告への取り組み方(フルファネル・態度変容)|リンク
  • DIGIDAY[日本版]「刈り取り」広告だけでは必ず頭打ちになる フルファネル最適化|リンク
  • デジマラボ フルファネルマーケティングの本質と実践(アトリビューション・データ統合)|リンク
  • Infinity-Agent Lab 縦型動画広告 認知・検索・CVの連動設計とKPI|リンク
  • デジプロ ファネルに合わせた広告戦略の基礎知識と効果測定|リンク

※本記事の数値・図の考え方は上記出典をもとに整理しています。ファネルの各段階と評価指標の対応は、刈り取りのみとフルファネルの違いを示す考え方に基づく模式的な整理です。掲載にあたっては最新の一次情報をご確認ください。

黍田 龍平
この記事を書いた人
黍田 龍平(きびた りゅうへい)

2001年生まれ、鹿児島県出身。高校卒業後、海外へ。帰国後は慶應義塾大学に入学。スタートアップでデザイナー・新規事業開発を担い、グラフィックデザインからWeb・UI/UXまで幅広く手がけながら、クライアント開拓営業やマーケティングにも従事。その後、2つの事業を立ち上げ、大学在学中の2021年5月に株式会社リスポを創業。これまでのデザイン経験を基に、動画生成AIとLLMを統合した独自のクリエイティブエンジンと制作ワークフローを開発し、AIクリエイティブプラットフォームUGC Makerをローンチ。

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