何を言えば人は動くのか。EC動画広告で成果を出す訴求パターンの選び方

動画広告の成果は、見せ方の巧みさよりも「何を言うか」という訴求軸で大きく変わります。EC動画で使われる訴求は、感情を動かす・信頼を築く・行動を促すという3つのタイプに整理できます。商材とファネルの段階に合わせて選び、掛け合わせ、テストで磨くことが、成果への近道です。
- フックが「掴む技術」なら、訴求は「動かす中身」。成果を分けるのは中身の設計
- 訴求は「感情を動かす」「信頼を築く」「行動を促す」の3タイプに整理できる
- 購入時にレビュー・UGCを信頼する人は全体で64.6%、化粧品では79.4%にのぼる
- 訴求はファネルの段階で使い分け、掛け合わせとABテストで磨いていく
- 景表法・薬機法・ステマ規制に触れる過度な訴求は避ける
こんにちは。UGC Makerを運営する株式会社リスポの黍田です。
今回は、動画広告で成果を出すうえで欠かせない「訴求パターン」についてお話しさせていただきます。訴求とは、商品の何を売りにして、見る人の心をどう動かすかという、広告の中身そのものです。同じ商品でも、どの切り口で語るかによって、反応はまったく変わってきます。
動画広告がうまくいかないとき、多くの方は「映像のクオリティが足りないのでは」「もっと凝った演出が必要では」と、見せ方を疑いがちです。もちろんそれも大切なのですが、実際に成果を大きく左右しているのは、見せ方よりも「何を言っているか」であることが少なくありません。刺さらない広告は、たいてい訴求がぼやけています。
本記事では、まず訴求という考え方を整理したうえで、EC動画で使える代表的な訴求パターンを10種類、3つのタイプに分けてご紹介します。さらに、それをファネルの段階でどう使い分け、どう掛け合わせ、どうテストで磨いていくのか、そして守るべきルールまでを、定性・定量の両面で具体的にお伝えします。
「見せ方」の前に「何を言うか」を決める
第4回で、冒頭で視聴者を掴む「フック」の重要性をお伝えしました。フックが「どう掴むか」という技術だとすれば、訴求は「何を言って動かすか」という中身にあたります。どれだけ上手に掴んでも、そのあとに続く中身が響かなければ、人は財布を開きません。掴む技術と、動かす中身。この両輪がそろって、はじめて動画広告は成果につながります。
ここで大切なのは、自社が「言いたいこと」ではなく、相手が「聞きたいこと」から出発することです。作り手はつい、機能やスペック、こだわりを語りたくなります。しかし見る人が知りたいのは、それを使うと自分の生活がどう良くなるのか、本当に効果があるのか、他とどう違うのか、といった自分ごとの疑問です。訴求設計とは、この相手の関心に、どの角度から答えるかを選ぶ作業だと言えます。
そして、正解の角度はひとつではありません。悩みに共感して心を開いてもらう角度もあれば、利用者の声で安心してもらう角度、今だけという希少性で背中を押す角度もあります。次章から、この角度、すなわち訴求パターンを整理していきます。
EC動画の訴求は3つのタイプに整理できる
EC動画で使われる訴求は数多くありますが、大きく3つのタイプに整理すると見通しが良くなります。人の心を動かして関心を引く「感情を動かす訴求」、事実や第三者の声で不安を消す「信頼を築く訴求」、そして今すぐの行動を促す「行動を促す訴求」です。

この3タイプは、人が物を買うまでの心の動きにも対応しています。まず関心を持ち(感情)、次に本当に大丈夫かと確かめ(信頼)、最後に買う決断をする(行動)。つまり、どの訴求も単独で完結するのではなく、組み合わせて使うことで効いてくるものです。まずはそれぞれのタイプに、どんな訴求が含まれるのかを具体的に見ていきましょう。
感情を動かす訴求
最初のタイプは、見る人の感情に働きかけ、「これは自分に関係がある」と思わせる訴求です。ファネルの入口、まだ商品を深く知らない段階で、まず足を止めてもらうのに向いています。
共感・悩み提起の訴求。ターゲットが日ごろ抱えている悩みや不満を、冒頭で言葉にする切り口です。「毎朝のメイクに時間がかかる」「収納がいつも片付かない」といった、相手が思わずうなずく一言から入ります。自分の悩みを言い当てられると、人は続きを見たくなります。第4回でお伝えした問題提起型のフックと、そのまま地続きの訴求です。
ストーリー・世界観の訴求。商品の開発秘話や、作り手の想い、使う人の暮らしのワンシーンを描く切り口です。スペックではなく物語で語ることで、記憶と感情に残ります。とくに、価格帯が高めの商材やこだわりの強いブランド、ギフト需要のある商品と相性がよく、「なんとなく良さそう」という好意を育てます。すぐの購入より、ブランドのファンを増やす場面で力を発揮します。
ビフォーアフターの訴求。使う前と後の変化を、映像で並べて見せる切り口です。変化が目に見える商材、たとえばコスメや掃除用品、収納グッズ、ダイエット関連などで非常に強く働きます。言葉で「効果があります」と言うより、変化を見せるほうが何倍も説得力があります。ただし、効果を断定しすぎたり、誇張した演出をしたりすると、後述する薬機法や景品表示法に触れるおそれがあるため、表現には注意が必要です。
信頼を築く訴求
関心を持ってもらえても、「本当に大丈夫だろうか」という不安が残っていると、購入には至りません。2つ目のタイプは、その不安を消し、信頼を築く訴求です。比較検討の段階で、とくに効いてきます。
社会的証明・レビューの訴求。実際の利用者の声や口コミ、レビューの評価、SNSでの評判、「累計販売○万個」といった実績を見せる切り口です。人は、企業が語る宣伝よりも、自分と同じ立場の誰かの体験を信じる傾向があります。第2回でお伝えしたUGCの力が、まさにここで発揮されます。
この訴求の効きやすさは、数字にも表れています。ある調査では、購入時にレビューやUGCを「信頼する」と答えた人は全体で64.6%にのぼり、とくに化粧品・スキンケアでは79.4%、旅行や保険などの無形商材では80.2%と、実物を確かめにくい商材ほど高くなります。第三者の声が、購入の背中を押しているのです。

権威・実績の訴求。専門家の推薦、受賞歴、ランキングでの上位、メディアへの掲載、成分や検査データといった裏づけを示す切り口です。理性的に「間違いない」と思わせる効果があり、健康食品やスキンケア、専門性の高い商材で有効です。ただし、根拠のない「売上No.1」「業界初」といった表現は景品表示法に触れるため、必ず客観的な事実にもとづいて使う必要があります。
実演・使い方の訴求。実際に商品を使っているところを見せる切り口です。使い方がイメージしにくい商材、たとえば調理器具や家電、ガジェット、コスメの塗り方などで、「自分にも使えそう」という安心を生みます。動画は、この実演ととりわけ相性がよい媒体です。文章や写真では伝わりにくい手順や質感を、数秒で直感的に伝えられます。
行動を促す訴求
関心を持ち、信頼もしてもらえた。それでも人は、背中を押されないと最後の一歩を踏み出さないものです。3つ目のタイプは、いま行動する理由をつくる訴求です。刈り取りの段階で主役になります。
比較の訴求。従来のやり方や他の選択肢と並べ、自社商品の優位を明確にする切り口です。「これまで手間がかかっていたことが、これひとつで済む」といった形で、違いを分かりやすく示します。乗り換えを促したいときに有効ですが、他社を不当に貶める比較は避け、あくまで自社の強みを際立たせる形にとどめます。
ベネフィットの訴求。機能そのものではなく、それによって得られる未来を語る切り口です。よく引かれる例えに、「人はドリルが欲しいのではなく、穴が欲しい」というものがあります。「大容量バッテリー」ではなく「一日中充電を気にせず使える」、「時短調理」ではなく「朝に少しゆとりが生まれる」。同じ機能でも、得られる生活の変化に翻訳すると、ぐっと自分ごとになります。
限定・希少性の訴求。「今だけ」「数量限定」「期間限定」といった、手に入りにくさを示す切り口です。人は、手に入らなくなるかもしれないと感じると、行動を早めます。刈り取りの最後のひと押しに効果的ですが、実際には限定でないのに限定を装うような表現は、景品表示法やステマ規制に触れるうえ、信頼を大きく損ないます。事実にもとづいた範囲で使うことが大前提です。
価格・コスパの訴求。価格の手ごろさや、一回あたりに換算したお得感、返金保証といった安心を示す切り口です。価格に敏感な層に効き、初回限定の割引などは刈り取りで強く働きます。ただし、安さだけを前面に出しすぎると、ブランドの価値を下げたり、価格競争に巻き込まれたりする面もあるため、他の訴求と組み合わせて使うのが賢明です。
訴求はファネルの段階で使い分ける
ここまで見てきた10の訴求は、どれか一つが正解というものではなく、顧客がいまどの段階にいるかによって、効くものが変わります。第8回でお伝えしたファネルの考え方と重ねると、使い分けの地図が見えてきます。

大まかに言えば、まだ商品を知らない認知の段階では、共感やストーリーといった感情を動かす訴求で関心を引きます。次の比較検討の段階では、レビューや権威、実演といった信頼を築く訴求で不安を消します。そして最後の刈り取りの段階では、限定や価格、ベネフィットといった行動を促す訴求で背中を押します。
よくある失敗は、この順番を無視して、まだ商品を知らない人にいきなり「今だけ半額」と限定訴求を当ててしまうことです。相手からすれば、知りもしない商品の割引を見せられても、心は動きません。逆に、もう買う気になっている人に、延々とブランドの世界観を語っても、まだるっこしいだけです。相手の段階に、訴求の角度を合わせる。これが使い分けの基本です。
訴求は「掛け合わせ」と「テスト」で磨く
訴求は、単独で使うだけでなく、掛け合わせることで力を増します。一本の動画のなかで、共感の訴求で心を開き、レビューの訴求で信頼を与え、最後に限定の訴求で背中を押す。この流れは、まさに顧客の心の動きをなぞっており、自然に購入へと導きます。
ただし、一本にあれもこれもと詰め込みすぎるのは禁物です。基本は「一本一メッセージ」。伝えたいことが多すぎると、結局どれも印象に残りません。掛け合わせるときも、主役の訴求を一つ決め、他はそれを支える脇役として置くくらいのバランスがちょうどよいでしょう。
そして最も重要なのが、どの訴求が自社の商材とお客様に効くのかは、最終的にはテストでしか分からない、ということです。第5回でお伝えしたABテストの出番です。同じ商品でも、悩み提起が効くのか、レビューが効くのか、価格が効くのかは、実際に複数の訴求で動画をつくって配信してみないと分かりません。むしろ、映像の細部を微調整するよりも、訴求の角度をまるごと変えたパターンを比べるほうが、成果は大きく動きます。勝つ訴求を見つけたら、それを軸に横展開し、疲弊してきたらまた次の訴求を試す。この繰り返しが、訴求を磨いていく王道です。
やりがちな失敗と、守るべきルール
最後に、訴求設計でつまずきやすい点と、EC事業者として必ず守るべきルールを整理しておきます。
機能を並べるだけで、ベネフィットがない。最も多い失敗です。スペックを列挙しても、人は自分の生活にどう関係するのか分かりません。必ず「それで自分がどう良くなるのか」まで翻訳して伝えます。
一本に訴求を詰め込みすぎる。伝えたいことが多いほど、印象は薄まります。一本一メッセージを基本に、主役の訴求を絞り込みます。
いつも同じ訴求しか使っていない。レビューばかり、あるいは価格ばかりに頼ると、届く相手が偏り、疲弊も早まります。3つのタイプをバランスよく回すことで、ファネル全体をカバーできます。
法律に触れる過度な訴求をしてしまう。ここは特に注意が必要です。化粧品や健康食品で効果を断定したり誇張したりすると薬機法に、根拠のない「No.1」や実際とは異なる価格の見せ方は景品表示法に、そして対価を伴う投稿で広告であることを隠せばステマ規制に触れます。強い訴求ほど、事実にもとづいているかを必ず確認する。これは、短期の成果以上に、ブランドの信頼を守るための大原則です。
訴求は、強ければ強いほど良いというものではありません。誇張して一時的に数字を上げても、実態が伴わなければ、レビューや評判はかえって悪化します。事実にもとづいた誠実な訴求こそが、長く売れ続けるための土台になります。
最後に
今回は、EC動画広告の訴求パターンについて、3つのタイプと10の切り口、そしてファネルでの使い分け、掛け合わせとテスト、守るべきルールまでをお伝えしました。見せ方の前に「何を言うか」を定め、相手の段階に合った訴求を選び、テストで磨いていく。この設計ができると、動画広告の成果は一段と安定します。
とはいえ、訴求の異なる動画を何パターンもつくり、テストして磨いていくとなると、制作の手間は一気に増えます。良い訴求の考え方を知っていても、一つか二つの訴求で止まってしまい、結局は試しきれない。ここが多くの事業者様の壁だと思います。
弊社では、レビューやInstagram、TikTokなどのUGCを活用し、訴求軸の異なる複数パターンの動画クリエイティブを、素材の確保から制作・運用まで支援するUGC Makerを提供しています。いろいろな訴求を、手軽に、数多く試せるかたちに。動画広告の成果づくりにお役立ていただけるかもしれません。
よくある質問
「訴求」と「フック」は何が違うのですか?
フックは冒頭で視聴者を掴む「掴み方」の技術、訴求は広告全体で何を売りにして心を動かすかという「中身」です。掴む技術と、動かす中身の両輪がそろって、はじめて成果につながります。
どの訴求が一番効きますか?
商材とターゲットによって変わるため、一概には言えません。実物を確かめにくい化粧品や無形商材では、レビューなどの社会的証明が効きやすい傾向があります。最終的には、複数の訴求をABテストで比べて見つけるのが確実です。
一本の動画に訴求はいくつ入れるべきですか?
基本は「一本一メッセージ」です。主役の訴求を一つに絞り、掛け合わせる場合も他は脇役に留めます。詰め込みすぎると、どれも印象に残らなくなります。
訴求で法的に気をつけることは?
化粧品や健康食品での効果の断定は薬機法、根拠のない「No.1」や不当な価格表示は景品表示法、対価を伴う投稿での広告隠しはステマ規制に触れます。強い訴求ほど、事実にもとづいているかを必ず確認してください。
いろいろな訴求を効率よく試すには?
訴求ごとにスクリプトから作り分けるのが理想です。UGC Makerなら、訴求軸の異なる複数パターンのスクリプトと動画を一括で生成でき、どの訴求が効くかを高速にテストできます。
訴求の作り分けと量産なら、UGC Makerにおまかせください
訴求の異なる動画を何パターンもつくり、テストして磨く。これを人手だけで回すのは簡単ではありません。その作り分けと量産を可能にするのが、株式会社リスポが運営するAIクリエイティブプラットフォーム UGC Maker です。
商品情報を入力すれば、AIが共感型からレビュー型、限定型まで、訴求軸の異なるスクリプトを複数生成。キャスト × スクリプト × フックの組み合わせで、訴求の違う動画を一括で量産できます。撮影・キャスティング・編集はいっさい不要で、1本あたり約5,000円から、1日100本以上。どの訴求が刺さるのかを、手を止めずに試し続けられます。
自社の商材に効く訴求を、数多く試して見つけたいという方は、導入相談・資料ダウンロードからお気軽にどうぞ。貴社専用のデモ動画も無料で作成しています。
- アライドアーキテクツ「生活者のUGCに対する意識調査2022」(購入時にUGCを信頼する割合・カテゴリ別)|リンク
- Shirofune ECサイトの広告戦略(価格・実績・悩みへの共感・購入後メリットなど訴求の切り口)|リンク
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※本記事の数値・事例は上記出典に基づいています。図1・図3は訴求パターンを整理した図、図2は出典データをもとに作成しています。訴求表現の適法性は商材や表現により異なるため、掲載にあたっては最新の一次情報と、必要に応じて専門家の確認をおすすめします。

2001年生まれ、鹿児島県出身。高校卒業後、海外へ。帰国後は慶應義塾大学に入学。スタートアップでデザイナー・新規事業開発を担い、グラフィックデザインからWeb・UI/UXまで幅広く手がけながら、クライアント開拓営業やマーケティングにも従事。その後、2つの事業を立ち上げ、大学在学中の2021年5月に株式会社リスポを創業。これまでのデザイン経験を基に、動画生成AIとLLMを統合した独自のクリエイティブエンジンと制作ワークフローを開発し、AIクリエイティブプラットフォームUGC Makerをローンチ。